- 2012.01.16 Monday
- 心臓の鼓動が聞こえる間は
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駅の改札近くにあった姿見に写った像が、何なのかすぐに理解できなかった。顔の肉がたるみ、髪がぼさぼさで、ダサいジーパンと袖の破けたダウンジャケットを着ている中年。
見た目がもっと汚いときもあったし、置かれている境遇に対して憂い恨み言をぶちまけたこともあったが、自分が惨めで哀れだと思ったことはなかった。「毎日が緑のフリース♪」と毎日まいにち、ひと冬ずっと同じフリースを着て過ごしたときも、鼻歌にして歌って済ませた。自分がやるべきことが分かっていたし、できると信じていたし、相応の努力をしていた。だからボロを着ていても平気だった。
姿見に写った自分を見て憐れだなという思いしか出てこなかった。自分を励ます言葉は、私のどこからも聞こえてこなかった。貧乏やフィジカルな苦痛には、強い気持ちで抗することもできる。でも胸の辺りが締め付けられる自己憐憫が長く続くと、死ぬしかない。眠りから覚めるたびにもう死のうと思った。毎日たくさんの人間が自殺していて、今日私がそれに含まれても何の不思議があるわけでもない。
ほんとうに何もできなかったけど、布団に包まって本を読んでいるときささやかな安心感を覚えた。私自身は汚くなってしまったが、本に書いてあることを理解したいという思いは消えなかった。未知のことを知りたいという思いも消えなかった。年末に古本屋で買った100円の小説に書いてあった。
心臓の鼓動が聞こえる間は諦めずに苦しさと戦い続けなければいけない
これまで何十回と再読をした小説だが、なぜか新鮮に私に響いた。
クソジャージに袖の破けたダウンジャケットを着て、走った。だらけた身体は一瞬で悲鳴をあげ、心臓は弾けてしまいそうだった。しかししっかりと全身に鼓動を感じるとることができた。
- | 新田将貴 | - | 23:47 | comments(6) | - |
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- 2011.10.21 Friday
- 無神論
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100円ショップで捨て置けないワルツが流れてきた。全く知らない歌だったので、僕は必死で歌詞をメモした。『無神論』という歌だった。さっきAmazonから届いた。
僕には神という明確な存在はいない。無心論者かとひとから訊かれれば、そうだと応えるだろう。僕はガチガチの唯物論を標榜しているわけではない。でもそういうしかないじゃないか、という悲しみを抱いている日本の若者は少なくないと思う。このササキゲンという男が歌う、無神論という歌には率直にその気持が込められていている。
atheismという言葉が持つニュアンスときっと随分違う気がする。 - | 新田将貴 | - | 01:54 | comments(0) | - |
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- 2011.10.16 Sunday
- あんときの日誌
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先日友人の結婚式があり、名古屋へ行ってきた。
新郎とは高校からの付き合いだ。野球部で3年間一緒にプレーした。2年のとき、肩が痛くて投球がずっとできなくて、ランニングや筋トレばかりの練習に嫌気が差して、監督に退部を申し出たことがあった。監督にはとりあえず休部して様子をみろと言われて、僕はしばらく練習に参加していない時期があった。
部員と監督は日誌という形で日々やりとりをしていたのだが、遊撃手の新郎は日誌の中で僕と一緒に野球がやりたいと書いてくれていた。1ヶ月以上休部していて、僕はもうグランドへ戻る勇気がなかった。彼が日誌にその言葉を書いてくれていなかったら、僕の野球はそこで終わっていたと思う。僕はその言葉を読んで、グランドに戻った。クソ重苦しい気分でグランドまでの坂を走った感覚を忘れることは、たぶん一生ないと思う。でもここで戻れないなら男やめろと言い聞かせて坂をダッシュした。
高3で硬式野球を終えたわけだが、僕にとって野球はそれ以降の人生でひとつの強い核となっていった。
トシ君、結婚おめでとう。そしてバージンロード1番に踏んでごめんね。 - | 新田将貴 | - | 21:23 | comments(0) | - |
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- 2011.10.15 Saturday
- 小説『強振ブルース』
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長編の電子書籍を配信後、気分転換のために短編を書いた。パブーという電子書籍のプラットフォームにだいぶ前にアップしていたが、この度最新版を掲載してみる。
最近原稿をインデザインで書くようになって、Wordをそのまま書き出すよりPDFがきれいになった。なので人に見せようという気になる。本来ならA4縦の見開きで作っておけば、賞に応募するための出力も、iPhoneやiPad用にデータ化するのもマージンの微調整で済む。
この原稿は脚注をイレギュラーな形で入れたので、再レイアウトするとなるとかなりタフな作業になるので、出力用のA4をそのままPDF化した。自分のiPod touchでPDFを読んでみたが、可読性は悪くなかった。
このタイミングでアップするのは、賞に落ちたからだ。WEBで調べると1等はずいぶん前に決まっていたようだ。なんかもう、ほんとに何もかも嫌になる。ベランダからジャンプしようかと思いつつ、思いとどまり表紙デザインをした。
いつもは「これがいいたい」というテーマに物語をつけていく書き方をするが、この小説に関しては、野球というスポーツのドライヴ感や激しさを描きたい、という動機で書き始めた。
小説の話ではなく、数年前公式戦で投げていて、右腕が折れた。右肩の腱の損傷も合わさって、もう全力でボールが投げられない。
僕が小説を書く理由のひとつとして、クソ無力でひたすら陰うつだった学生時代を取戻したい、というものがたぶんある。物語の中で躍動する登場人物はクソ無力でもなく、ひたすら陰うつでもない。そして、それらの登場人物を操って小説を完結させる僕自身も、クソ無力でもひたすら陰うつでもない。だから僕は、一文の得にもなってないけど、ずっと新人賞に落選してるけど、小説を書いている。
野球に関しては、真っ直ぐに、クソ無力でひたすら陰うつだった学生時代を野球で取戻そうとした。交通事故後のリハビリで体質が変わって、身体がでかくなった。鍛えれば、筋肉はちゃんとついてくれた。強迫神経症やパニック障害も学生時代は自分に何が起こっているのかすら分からなかったけど、大人になって自覚ができるようになり、少なくともマウンドの上では対処できた。二十代半ばから後半にかけて、野球が、投手というポジションが本当に楽しめるようになったし、心の底から、何よりも、好きになった。
10歳から投手をしていた。精神薄弱ながら、僕は投げ続けた。大げさな比喩ではなく、腕が折れるまで投げ続けたことは、よくやったと思うし、野球というスポーツに誠実に接した結果だ。でもやっぱり、悔しくて堪らないときがある。
野球への未練が消えるわけではないけど、書き上げられてよかったと思える小説だ。
下記のアイコンをクリックすると、zip形式で圧縮したPDFがダウンロードできます。
読んでいただけると、幸甚です。新田

- | 新田将貴 | 小説 | 06:22 | comments(0) | - |
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- 2011.10.15 Saturday
- 小説『直列スリーピース』
- | 新田将貴 | 小説 | 06:15 | comments(0) | - |
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